開発の経緯 / 特性
開発の経緯
アダリムマブは、ヒト型の抗ヒト腫瘍壊死因子α(Tumor Necrosis Factor-α:TNF-α)モノクローナル抗体で、ヒトTNF-αに対して高い親和性を有します。アダリムマブBS 皮下注20mg シリンジ0.4mL「FKB」、アダリムマブBS 皮下注40mg シリンジ0.8mL「FKB」及びアダリムマブBS 皮下注40mg ペン0.8mL「FKB」(以下、本剤)は、協和キリン富士フイルムバイオロジクス株式会社(FKB)が先行バイオ医薬品(一般名:アダリムマブ(遺伝子組換え))(以下、先行バイオ医薬品)のバイオ後続品として開発した薬剤です。
本剤の臨床試験は、日米欧のバイオ後続品に関するガイドラインに基づき、本剤の先行バイオ医薬品との薬物動態、有効性、安全性及び免疫原性の同等性/同質性を評価する目的で国内外において実施計画しました。薬物動態の同等性/同質性を評価する臨床試験としては、健康成人男女を対象とした海外第Ⅰ相試験(FKB327-001試験)、日本人健康成人男性を対象とした国内第Ⅰ相試験(FKB327-006試験)を実施しました。また、海外第Ⅰ相試験終了後、本剤と先行バイオ医薬品の有効性、安全性及び免疫原性の同等性/同質性を確認する目的で、関節リウマチ患者を対象に海外第Ⅲ相試験(FKB327-002二重盲検比較試験及びFKB327-003継続投与試験)を実施しました。さらに、第Ⅲ相試験と並行して、健康成人男女を対象に3製剤(バイアル製剤、シリンジ製剤及びペン製剤)使用時の相対的生物学的利用率を評価する目的で、海外第Ⅰ相生物薬剤学試験(FKB327-005試験)を実施しました。
本邦のバイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針に従い計画・実施した品質特性解析、非臨床試験及び臨床試験結果より、本剤と先行バイオ医薬品の同等性/同質性が確認されたことから、本邦では2019年10月に製造販売承認申請し、2020年6月に承認を得ました。更に2021年8月に潰瘍性大腸炎、2022年2月にぶどう膜炎に係る効能又は効果追加の承認を得ました。また、2022年5月に潰瘍性大腸炎(成人)の用法及び用量について、一部変更承認を取得しました。
効能又は効果
アダリムマブBS皮下注20mgシリンジ0.4mL「FKB」
アダリムマブBS皮下注40mgシリンジ0.8mL「FKB」
アダリムマブBS皮下注40mgペン0.8mL「FKB」
既存治療で効果不十分な下記疾患
●多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
アダリムマブBS皮下注40mgシリンジ0.8mL「FKB」
アダリムマブBS皮下注40mgペン0.8mL「FKB」
●関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
既存治療で効果不十分な下記疾患
●尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬
●強直性脊椎炎
●腸管型ベーチェット病
●非感染性の中間部、後部又は汎ぶどう膜炎
●中等症又は重症の活動期にあるクローン病の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
●中等症又は重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)
アダリムマブBS皮下注20mgシリンジ 0.4mL「FKB」 |
アダリムマブBS皮下注40mgシリンジ 0.8mL「FKB」 |
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アダリムマブBS皮下注40mgペン 0.8mL「FKB」 |
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関節リウマチ | - | ● |
尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬 | - | ● |
強直性脊椎炎 | - | ● |
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎 | ● | ● |
腸管型ベーチェット病 | - | ● |
クローン病 | - | ● |
潰瘍性大腸炎 | - | ● |
非感染性の中間部、後部又は汎ぶどう膜炎 | - | ● |
特性
1. 本剤は日本初のアダリムマブのバイオ後続品です。
2. 本剤は、先行バイオ医薬品の有効成分のアダリムマブと同一のアミノ酸配列(一次構造)を有しています。物理化学的特性、生物活性に関する一連の比較試験で先行バイオ医薬品との同等性/同質性が示されました。
3. 健康成人を対象とした国内第Ⅰ相試験において、本剤と先行バイオ医薬品の薬物動態の同等性が示されました。
4. 関節リウマチ患者を対象とした海外第Ⅲ相試験において、本剤と先行バイオ医薬品の有効性の同等性が確認されました。
本剤投与時の安全性及び免疫原性は、先行バイオ医薬品と同等であることが確認され、本剤の長期使用(最長2年間)及び本剤と先行バイオ医薬品の切り替えによっても安全性及び免疫原性に影響を与えないことが確認されました。
5. 本剤の20mgと40mgシリンジ製剤は、針刺し事故防止目的のセーフティーガード付きの製剤であり、医療従事者及び患者の安全性に配慮した製剤です。本剤のペン製剤は、キャップを外して、押し込むだけの2ステップ自己注射が可能な製剤です。
6. 重大な副作用として、重篤な感染症、結核、ループス様症候群、脱髄疾患、重篤なアレルギー反応、重篤な血液障害、間質性肺炎、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全が認められています。
主な副作用(発現頻度5%以上)は、頭痛、自己抗体陽性(抗DNA抗体陽性、抗核抗体陽性)、上気道感染(鼻咽頭炎等)、咳嗽、肝酵素上昇、発疹、そう痒症、湿疹、発熱、注射部位反応(紅斑、そう痒感、発疹、出血、腫脹、硬結等)などでした(添付文書の副作用及び臨床成績の安全性の結果をご参照ください)。